

トップページ > 事業案内 > 三井物産の取り組み‐挑戦と創造‐ > 消費者の視点で多角的医療サービスを展開
今、日本の人口動態は史上類を見ない勢いで少子高齢化が進んでいる。高齢化率(全人口に対する65歳以上人口の割合)が7%から14%に推移するのに要した年数を「倍加年数」というが、それが米国で71年、フランスで100年かかったのに対し、日本は約20年で到達すると見られている。2025年には全人口の半分が50歳以上になる計算だ。
こうした環境下、増え続ける高齢者の医療費抑制は国家的課題となっており、診療報酬や薬価改定などドラスティックな医療制度改定を行ってきた。治療から病気予防へ、介護から介護予防へと医療政策の重点をシフトさせる。これに伴い、医療業界全体に地殻変動が起き、民間企業の経営効率やマネジメント手法の導入を求める声が広がっている。ここに三井物産の持てるネットワーク力とノウハウを生かし、医療サービス分野へ参入するチャンスが生まれた。
このチャンスを生かして、医療・予防・介護の総合的な取り組みによって消費者へ「上質な生活」を提供するという社会的使命を担って船出したのが「多角的医療サービス」事業だ。政府が進める「規制緩和」策を追い風に、商社ならでは、三井物産ならではの強みを十二分に発揮して、オンリーワンの医療サービス提供への挑戦が始まった。

調剤薬局向けの受発注・在庫管理サービスで、薬のサプライチェーン効率化をサポートする(株)エムエムネット
2004年4月、当社はこれまで社内各部署がそれぞれに取り組んできた消費者を対象とするビジネスを統合し、強化するためにコンシューマーサービス事業本部を設立した。メディア関連、クリニックモール、介護用品レンタル、事業所給食事業、不動産の有効活用、人材派遣など「愉」「医」「食」「住」「人」をキーワードに消費者ニーズに合ったサービスを事業化するために積極的にビジネスを展開している。
コンシューマーサービス事業本部の中で、医療・予防・介護の3分野に取り組んでいるのがサービス事業部クオリティーライフ事業室だ。医療を「消費者を起点としたサービス事業」としてとらえ、商社ならではの強みを生かした事業を生み出し進めている。

複数診療科目の集合体「メディカルモール」の開設・運営を通じて、医院経営をサポートする(株)メディヴァンス
三井物産が目指すのは「消費者が牽引するヘルスケア時代」だ。病気にかかったら医師任せではなく、消費者自らが積極的に予防に努め、治療に参加する意識を持つ社会――それこそが少子高齢化時代の理想であり、医療費増大を抑制する有力な手段ともなる。
当社はこうした社会の構築に向け、医療モール事業や医療・健康ポータルサイト事業をはじめとする「健康回復・維持・増進の場」と「優良なサービス・情報・媒体」の融合により、消費者の求める「健康的で上質な生活=クオリティーライフ」を実現する。
医療サービス分野で事業を進めるに当たり、重要なことは消費者ニーズの把握とともに、行政の動きをいち早くキャッチし、方向性を迅速に定めていくことである。例えば、医療モール事業は「風邪と腰痛を1か所で治療してもらえれば便利」という消費者ニーズと、国の政策である病診連携を進め中核病院から外来機能を分離し、地域の診療所が外来機能を担う「外来のサテライト化」の動きに対応するものだ。また、医療・健康ポータルサイト事業は医療機関の情報公開への消費者ニーズと、それを推進する行政の方向性を見据えた事業である。
今年4月に施行された改正介護保険法では相対的に福祉用具レンタルの自己負担割合が増えるなど、行政の動向によって競争激化が予想される分野もある。しかし、サービス内容の質と資金力に自信があれば、この状況は大きなビジネスチャンスともなるのだ。

室の高い医療情報とITを融合して、病気の予防を消費者のもとに。24時間365日の健康相談も、(株)保健同人社
クオリティーライフ事業室が携わる医療・予防・介護の3分野のうち医療分野を担うのが、複数の診療クリニックを備えた「医療モール」の開設・運営事業を手掛ける(株)メディヴァンスと、調剤薬局向け物流・金融支援事業を行う(株)エムエムネットだ。
メディヴァンスでは、地域の医療ニーズを入念に調査したうえで必要な診療科目とサービスを選定し、施設構想の企画立案から開設、医師の誘致、開業支援、開業後の運営まで、地域にとって最適な医療を提供するための総合支援を行う。モールという「箱」を用意し、そこにコンテンツである医師を誘致し、医療事務や広告を含め非診療行為すべてを受託する――これこそが医療をサービスととらえ、商社のネットワーク力とノウハウを発揮できるビジネスモデルだ。これにより医師は質の高い医療に専念することができる。メディヴァンスは既に首都圏で数か所の開設実績を持つ。
また、エムエムネットは国の医薬分業政策にそって、全国5万店舗まで拡大した調剤薬局を対象にサプライチェーンマネジメントと金融サービスを駆使した支援事業を行い、医薬品調達の効率化と財務最適化をサポートする。
介護分野ではケアレックス(株)が電動ベッドや車イスなどの福祉用具のレンタル、配送代行、回収した商品の洗浄消毒、保管といったトータルサービスを提供している。予防分野では赤本『家庭の医学』で知られる(株)保健同人社に出資。出版をはじめ電話相談、Webによる情報配信といったさまざまなチャネルで健康・医療情報の提供を行っている。さらに、(株)アールスリー・ヘルスケア・プランニングを立ち上げ、医療・健康ポータルサイト事業にも着手した。
(株)アールスリー・ヘルスケア・プランニングの医療・健康ポータルサイト「ここカラダ」
従来商社といえば、資源エネルギー開発やプラント輸出、鉄鋼など原材料の貿易といった重厚長大のイメージが強かった。しかし、企業を取り巻く環境が大きく変化している今、収益面のリスク分散の意味でも新たな事業分野への挑戦は必須となっている。そこで当社は一般消費者向けビジネスをその柱と位置づけた。基本戦略は、川上を対象とする物流型ではなく、川下に焦点を当てた事業型での展開だ。
これまで手掛けてきた川上の事業も、流れの先をたどれば必ず最終ユーザーである消費者へ行き着く。つまり、すべての事業は、消費者を起点として成り立っている。そう考えれば、たとえ鉄鋼や機械を扱う部署であっても、常に消費者の存在を意識する必要がある。CSR(企業の社会的責任)やコンプライアンス(法令遵守)の課題も、消費者を含めたステークホルダーとの対話があってこそ実現できる。ここにコンシューマーサービス事業本部、強いては三井物産にとっての意義がある。
医療サービスを通じて消費者の声に耳を傾け、社会からの期待と信頼に応えることで、全社の事業を社会性の高い「良い仕事」へつなげていく。結果として収益性が上がる。三井物産はその牽引車となることを目指し、オンリーワンの医療サービスの提供に向けてあくなき挑戦を続ける。
2006年6月掲載
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